原発に関する書籍を紹介します。
登録日 |
書籍名 | 著者 |
2023年9月12日 | 樋口 英明 | |
2023年4月18日 | 山田國廣、 中村修 | |
2023年2月7日 | いまこそ私は原発に反対します | 日本ペンクラブ編 |
2023年1月26日 |
「脱原発」成長論 ――新しい産業革命へ |
金子 勝 |
2022年12月29日 | 菅谷(すげのや)昭 | |
2022年7月25日 |
暴走する原発 チェルノブイリから福島へ これから起こる本当のこと |
広河 隆一 |
2022年6月25日 | 金子 勝 | |
2022年6月14日 | 吉田千亜 | |
2022年5月26日 | 石原大史 | |
2022年5月16日 |
日米中枢 9人の3.11 |
太田昌克 |
2022年5月2日
|
騙されたあなたにも責任がある |
小出 裕章 |
2022年4月6日 |
原発に反対しながら研究を続ける 小出裕章さんのおはなし |
小出 裕章 |
2022年3月31日 | 子どもたちを放射能から守るために | 菅谷(すげのや)昭 |
2022年3月22日 | チェルノブイリいのちの記録 | 菅谷(すげのや)昭 |
2022年3月12日 | いないことにされる私たち | 青木 美希 |
2022年3月8日 | NO NUKES 〈ポスト3.11〉 映画の力・アートの力 | ミツヨ・ワダ・マルシアーノ |
2022年2月25日 | 私が原発を止めた理由 |
樋口 英明
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2022年7月25日 暴走する原発 チェルノブイリから福島へ これから起こる本当のこと
出版社 小学館
発行日 2011年5月25日
価格 1300円+税
著者 広河 隆一
著者略歴:広河 隆一(ひろかわ りゅういち)
1943年中国天津生まれ。早稲田大学卒業後、イスラエルに渡り、帰国後、中東問題と核問題を中心に取材を重ねる。レバノン戦争とパレスチナ人キャンプの虚殺事件の記録でよみうり写真大賞、IOJ国際報道写真コンテストの大賞・金賞受賞。チェルノブイリとスリーマイル島原発事故の報告で、講談社出版文化賞受賞。『写真記録パレスチナ』(日本図書センター)で土門拳賞受賞。月刊誌『DAYS JAPAN』編集長。著書多数。
本の紹介:kazu
この本は、2011年3月の福島第一原発事故から、2か月後に発行されている。
著者は、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故後、50回以上現地取材を重ね、1993年には避難民健康調査を、現地と協力して実施。これらの活動の結果、1996年に「チェルノブイリの真実」を発行。本書「暴走する原発」は「チェルノブイリの真実」に加筆したもので、チェルノブイリ原発事故への対応から学び、福島原発事故に私たちがどう対処すべきかを考えるうえで有益としたためである。としている。
福島原発事故から、11年たった今、私たち日本人は、チェルノブイリ原発事故から、何を学び適切な対処を行ってきたのだろうか。それとも、なにも学ばなかったのか。
目次
第1章 チェルノブイリから何を学ぶのか
第2章 チェルノブイリ原発事故
第3章 汚染の規模
第4章 体内被曝の現実
第5章 小児甲状腺がんの激増
第6章 避難民 調査報告
1986年4月に発生したチェルノブイリ原発事故は、史上最大の原発事故を現す国際評価尺度の「レベル7」とされた。それから25年目の2011年3月に起こった福島第一原発の大事故は冷却機能が失われ、水素爆発やガス抜きによって、大量の放射性物質がまき散らされ、高濃度の放射能汚染水が海に放出された。4月にはチェルノブイリとならぶ「レベル7」とされた。
ところが、日本では、メディアや学者たちは、福島原発事故は「チェルノブイリの10分の一しか放射能を放出していない」と大げさに騒ぐべきではないと、事故を小さく見せようとした。この数値は、大気中に放出した放射能だけを計算し、海に放出した莫大な放射能を除外したものだった。
チェルノブイリ事故は放射性物質セシウムだけでもヒロシマ型原爆の500個から800個にあたる量で、たとえ10分の一でも、ヒロシマ型原爆の50個以上のの放射能が排出されたことになる。
これが、大げさに騒ぐべきことではないと、どんな顔して言えるのだろうか。
2011年4月19日、文部省通達で、福島県の学校(幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校)の校庭利用時の放射線量基準値は、毎時3.8マイクロシーベルト、年間20ミリシーベルトが子どもたちの基準値として引き上げられた。この値は、ウクライナ議会が1991年に可決した法律「汚染地域の定義」によると「無条件に住民避難が必要な地域」は個人の年間被ばく量が5ミリシーベルトとされた。日本の児童の基準値は、ウクライナで強制避難が定められた数値の実に4倍である。
いかに日本が国民の命を軽く見ているか。この1件だけでもよくわかる。
チェルノブイリ原発事故後、5年から15年かけて、小児甲状腺がんが激増している。事故当時10歳未満の子どもたちが多数発症している。本来、甲状腺がんは、100万人に一の発症と言われているが、1992年時点で、ベラルーシで世界平均の20倍、ゴメリ州で118倍である。
福島では、2021年6月時点で300人が甲状腺がんまたはその疑いと診断されている。これに対し、福島県の専門家会議は、「原発事故との因果関係は認めない」という立場をとり、原発推進者たちを弁護し、国民の命をないがしろにしている。
福島原発事故から11年。日本はチェルノブイリ事故から、なにも学ばず。原発再稼働に躍起になっています。
この愚かな道筋の先に、地震国日本の行方が見えてきます。
いまからでも遅くはない。全原発を停止、廃炉化へ向けた取り組みで、悲劇への道を迂回して、希望への道にしませんか。
そのためにも、この本をご一読されることをお薦めします。
2022年6月25日 原発は不良債権である
出版社 岩波書店
発行日 2012年05月09日
価格 500円(+税)
著者 金子 勝
著者略歴:金子 勝(かねこ・まさる)
1952年生まれ.慶応義塾大学経済学部教授.経済・財政学.近著に『フクシマからはじめる日本の未来』(共著,アスペクト),『放射能から子どもの未来を守る』(共著,ディスカヴァー携書),『「脱原発」成長論――新しい産業革命へ』(筑摩書房),『新興衰退国ニッポン』(共著,講談社),『新・反グローバリズム――金融資本主義を超えて』(岩波現代文庫),『日本再生の国家戦略を急げ!』(共著,小学館),『世界金融危機』(共著,岩波ブックレット),『閉塞経済』(ちくま新書),『地域切り捨て』(共編著,岩波書店),『環境エネルギー革命』(共著,アスペクト)など.
本の紹介:kazu
目次
一 電気料金値上げキャンペーンの「嘘」
二 東電は事実上,経営破綻している
三 核燃料サイクル事業という“不良債権”
四 いかなる電力改革が必要か
五 福島から始める日本再生
2012年5月発行のこの本は、今読んでも新しい。福島原発事故から10年。何が変わって、何が変わらないのかを検証する意味でも、読むべき本である。
時は民主党政権時代。
福島原発事故後、東電はじめ電力会社は一斉に原発が停止して電気が足りなくなる。火力発電の燃料費上昇で電気料金を値上げしなければならない。のキャンペーンを展開した。
ところが、事実は、原発が停止したことで、高額な建設費と多額のメンテナンス費がかかる原発は利益を生まない一方で借金返済とメンテナンス費用がかさんでいく不良資産と化する。
だから、原発=不良債権という本質を隠すため、「原発が動かないと停電になる」などと根拠のないキャンペーンを繰り返して、国民を脅して、再稼働を急ごうとする。
電力会社にとって、減価償却がおわった原発ほど儲かるものはない。老朽原発ほど、運転コストだけで利益があがる。だから、無原則にすべての原発を再稼働したくなるのだ。
原発再稼働問題は。エネルギー不足問題でなく、電力会社の経営問題なのだ。
しかし、老朽原発を動かせば、危険性も高まる。もう一度同じ事故を起こせば、日本は終わってしまう。このころの国民は、各種世論調査でも、危険性を認識して、再稼働に対し、圧倒的に「反対」が多い。
電力改革(特に東電)への提言では
「経営責任と貸し手責任を問うとともに、発送電分離を行い、資産売却と原子力予算を組み替えるという方式が、最も望ましい方式と考えられる。」
が、今でも新鮮だ。何一つ実現していないのだから。
原発の危機管理対応では
- 原子力行政への国民の信頼を取り戻すため、責任者を解任し、原子力ムラなど利害関係、利益相反の疑いのあるものを除外したメンバーに入れ替える。加えて政府から独立した機関にする。
- 最悪の事態備えて大胆な措置を
原発の新規建設はやめる。危険性の高い原発を廃炉にする。
- 福島原発事故の原因究明と、安全基準の見直し、立地自治体だけでなく、周辺自治体とのリスクコミュニケーションの新しい―ル作成
福島の再生では
○根拠のない風評被害宣伝でなく、米など食品の全量検査で、信頼回復を。
○基準値を超えた農家は、作付け停止せず、離農を防ぐため、試験耕作として栽培。結果基準値を超えた米は、森林バイオマス発電の燃料として利用する。
○原子力ムラ主導の手抜き除染でなく、子どもと妊婦を優先した本格除染を
○高線量地域には新しい町の建設を→建設費のコストがかさむが、それは狭い国土にたくさんの原発を建設したコストです。
○再生エネルギーへの転換に伴う関連産業の立地を進める
という提起がされています。
そして
「原発が動かなければ、日本経済がダメになるという財界の主張は、原発依存に後戻りすれば、世界で起きている環境エネルギー革命から日本は取り残される道を選択することになる。
2012年6~7月に向かって、日本はエネルギー政策の転換点を迎えます。7月にはエネルギー基本計画が策定されます。それが「失われた20年」を断ち切る第一歩となるか、「失われた30年」へ向かってしまうのか。どちらを選ぶかを決めるのは、私たちなのです。」
まさにその通り。原発事故から10年。私たちは「失われた30年」へ向かっているのではないでしょうか。
今一度立ち止まって、本当にこれでいいのかを考え、原発ゼロを進める政権をつくる必要があるのではないでしょうか。
2022年6月14日 孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
出版社 岩波書店
発行日 2021年1月29日
価格 1800円+税
著者 吉田千亜(よしだ ちあ)
著者略歴:1977年生まれ。フリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材、サポートを続ける。著書に『ルポ母子避難』(岩波新書)、『その後の福島──原発事故後を生きる人々』(人文書院)、共著『原発避難白書』(人文書院)など。
本の紹介:KAZU
この本は、2011年3月11日に発生した東日本大震災。そのあとに発生した福島第一原発事故で消火・救援活動で、休むことなく動き続けた、福島県双葉郡の僅か125人の双葉消防本部の署員の証言をまとめたものである。
いたるところで、涙なしでは、読めない「肉声」を聞くことができる。
著者は2018年10月から双葉消防本部で66人の署員から聞き取りを行っている。
署員になって数十年のベテランから、当時初任教育を受けていた新人の若い署員までである。
目 次
1 大震災発生 3月11日
2 暴走する原発 3月12日
3 原発構内へ 3月13日
4 三号機爆発 3月14日
5 「さよなら会議」 3月15日
6 四号機火災 3月16日
7 仕事と家族の間で 3月17日~月末
8 孤塁を守る
署員の証言をいくつか紹介する
○津波で被災した人の救助活動の途中、無線で原子力災害時特別措置法の「10条通報」を無線で確認。そのあとほとんど間を置かずに「15条通報」を聞いたとき、「何かの間違いだ」と思った。10条から15条までが早すぎるうえ15条通報は内閣総理大臣が「原子力緊急事態宣言」を公示する非常事態を意味する。
○3号機爆発のあとキノコ雲があがり、広島・長崎の原爆を思い浮かべた。
○消防車で出動するときは、もう戻れない覚悟で出ていった。「特攻」と同じ。
○消防長から「東電から原子炉の冷却要請が来ている。どうおもうか」との話に激論飛ぶ。「この時以上に緊迫した場面はない」
「殺す気なのか」「何を考えているんだ」「無事な保証は何もない。情報が足りなさすぎる」
「トカゲのしっぽ切りでは」
「これでは特攻隊とおなじではないか」
「行きたくありません。家族が大事です」
作業員を助けるためなら、構内に行くが、捨て駒のように「冷却しろ」「突入しろ」というのは違うだろう
「状況が把握できていなくて、リスクが高すぎる。死ぬことが前提だ」と感じた
何人かが、携帯に、メモ用紙に「遺書」を書いた。
○東電テレビ会議記録から見る、情報を伝える意識の欠如
「構内は400ミリシーベルトの瓦礫は片付いていないので、消防車が入った場合、出れない。ことを了解してほしい」との保安班に、本店は「行ったら出れないところに消防隊に来てもらうことは、事前に話しておいたほうがいいのでは」と答え、本店総務は「努力を続けるだけでいい」と答えている。結局双葉消防本部に伝えられることはなかった。
もう一つ
4号機火災で、消防本部に通報される5分前に、東電社員が「炎が見えない」と、自然鎮火の確認をしているが、東電では、鎮火確認をあえて消防にさせることで、出動にストップをかけなかった。 この時点で消防本部に伝えられたら、多くの署員が高濃度の放射能を浴びることはなかった。
○自衛隊ヘリコプターによる放水と東京消防庁のハイパーレスキュー隊の放水は、大々的に報道されたが、双葉消防本部が行ってきた、事故発生以降の数々の活動は全く報道されず、誰にも知られていなかった。
家族の避難を助けることできず、寝食を忘れて、劣悪な中活動してきた消防署員は、事故から2~3年の間に、半数以上が鬱による休職を経験している。
その署員たちが最後に語った言葉。
・自分に関係ないことを、人は忘れてしまう。大きな災害が起きてからでは遅い。起きる前に、できる何かを探してほしい。知ることで、被害者、被災者,そして亡くなってしまう人が少しでも減ってくれればいい。
・どこで災害が起きてもおかしくない今、明日は我が身と思って万全に備えてほしい。
・「これほど風化が速いとは思っていなかった。」
事故当時に過酷な活動を続けながら「ヒーローになる必要はない」と淡々と孤塁を守り続けた彼らがしばしば口にするのは、「忘れないでほしい」「我々の経験を活かしてほしい」「教訓にしなくてはならないようなことは、二度と起きてほしくない」という言葉だ。
2022年5月26日 原発事故 最悪のシナリオ
出版社 NHK出版
発行日 2022年2月10日
価格 1700円+税
著者 石原大史
著者略歴:2003年NHK入局。長崎放送局、大型企画開発センターなどを経て現在、政策局ETV特集班ディレクター。担当した番組にETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」(第66回文化庁芸術祭大賞)、「薬禍の年月 サリドマイド事件50年」(第70回文化庁芸術祭大賞、第41回放送文化基金賞・最優秀賞)、「お父さんに会いたい“じゃぱゆきさん”の子どもたち」、NHKスペシャル「空白の初期被曝 消えたヨウ素131を追う」(第56回JCJ賞)など。共著に『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社)。
本の紹介:KAZU
本書は、2011年3月11日に起きた、東日本大震災、福島第一原発事故後、2週間たって出された日本政府の「最悪のシナリオ」。この間に東京電力や自衛隊、アメリカ政府などが「最悪の事態」想定を独自に検討していた。
事故から10年たった2021年、当時の政府の最高責任者の菅直人元総理大臣を始め、東電、自衛隊、アメリカ政府関係者への聞き取り調査から、「最悪のシナリオ」に迫った力作である。
「最悪のシナリオ」の謎
なぜ原発事故から2週間もたって、「最悪のシナリオ」が政府に届けられたのか。
「最悪のシナリオ」は危機管理の要諦。進行する危機の全体状況を把握し、現状がどの地点にあり、どんな対策を打てばよいのか。シナリオはそれらを判断する指針となるからだ。「最悪のシナリオ」は事故が起きる以前、あるいは、事故の最初期にこそ必要なものではないか。
一つの答えが、菅直人元総理大臣の言葉から見えてくる「東電というプロ集団が事故なんて起きない、と言っていたのが起きてしまった。まさに原発の安全神話を疑いなく信じていたわけだ。事故が起きるなんて発想自体がなかった」
目次
第1章 沈黙 p15
遅すぎたシナリオ
3月12日 1号機水素爆発の衝撃
パニックへの恐怖
動き出したアメリカ
第2章 責任と判断 p63
恐れていた連鎖―――3月14日、3号機水素爆発
東電本店の危機感
巻き込まれた自衛隊
アメリカの焦り
「撤退か否か」―――判断を迫られた、官邸の政治家たち
15日早朝、やってきた“そのとき”
第3章 反転攻勢 p151
関東圏に到達した放射能
それは”誤認“だった
「使用済み燃料プール」という名のモンスター
ヘリ放水作戦開始
英雄的行為
分水嶺
第4章 終結 p235
吉田所長の“遺言“
東電―自衛隊、非公式会談
アメリカの大規模退避計画
自衛隊の覚悟
日本政府版「最悪のシナリオ」とは何だったのか
最後の謎
エピローグ 「最悪のシナリオ」が残したもの p300
原発事故後10年、当時、主要な役割をになった3人の言葉を紹介。3人共通しているのは「また同じことが起きる」ということ。
その中のひとり、寺田学・衆議院議員の言葉を紹介する。
「10年前に戻っているんですよね。リスクは顕在化ない。原発事故は起きないという想定。起きたとしても10年前のものと比べれば軽微なもので終わるという前提で、また思考回路が動き始めていますし、政策が動き始めていると。なぜかと問われると、本質的に10年前のことを忘れているんだろうと思います。
10年前に起きた事故がいかに甚大な事故であって、いまのいままで苦しむ方が非常に多い。故郷を失った方々も多いし、そういった事故はまた起きるものだという前提に立たなければいけないと思います。もう一度あのような事故が起きたときに、東京含めて、こうやって普通の生活を続けられる保証はないと思うので。命の危険を抱えながらも国を守るために事故対応しなければいけない方は、どのような立場の方で、どのような法体系の中で命令が出せるのか。そのような方にどのような保証をし、立場を守るのか。本当は再設計して、事故が起きたとき、少しでも被害が少なくなるように、迅速に対応できる仕組みをつくっておくことが大事なのではないかと思います。
2022年5月16日 日米中枢 9人の3.11 ー核融合7日間の残像ー
出版社 かもがわ出版
発行日 2022年3月11日
価格 1800円+税
著者 太田昌克
著者略歴:早稲田大学政治経済学部卒、政策研究大学院大学で博士号(政策研究)。強度通信社に入社し、広島支局を初任地に外信部、政治部、ワシントン特派員などを歴任。現在は同社編集委員・論説委員、早稲田大学・長崎大学客員教授。
著書に『日米〈核同盟〉』(岩波新書)、『日米「核密約」の全貌』(筑摩書房)、『「核の今」がわかる本』(講談社)『核の大分岐』(かもがわ出版)、など多数。
本の紹介:KAZU
本書は共同通信社が2021年3月から12月までに配信したインタビュー連載企画「核融合の残像 福島原発事故10年」の計41回分を収録したもの。
当時の日米両政府で政策決定の中枢にいた人物、事故収束のカギを握った専門家を中心に計9人の証言をストーリー仕立てで記述、特に原発事故の趨勢を決めたとも言える初動の一週間に焦点を絞り、メルトダウン(炉心溶融)が三つの原子炉で進行し、事故の深刻度を示す国際尺度が旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ最高度の「レベル7」となった未曽有の有事を活写している。
特に事故から10年を過ぎた今鳴らす警鐘こそが、9章に登場する、安井氏(経産省大臣官房審議官)が強調した「不可知の領域」ではないだろうか。
「自分たちが人間である以上、その時点で知りえないことがあると考えるべき。今のルールを疑い、新しい知見を貪欲に取り込み、備えるしかない。人間は神ならぬ存在なのだから」
扱いをひとつ間違えば人間の生死すら左右する原子力という世界における「不可知の領域」。そこに対する畏怖の念が、東京電力福島第一原発事故が起きるあの日まで決定的に欠如していたのではないか。それこそが「原子力安全神話」の底部に流れていた真実ではないか。
人間は神ならぬ存在だ。技術革新にはそれを制御する人間の知恵とモラル、胆力こそが不可欠なのである。
2022年3月に発行されたばかりの新刊をぜひ手に取ってください。
【目次】
1章 未曽有の危機 証言者 グレゴリー・ヤッコ
(米原子力規制委員会(NRC)委員長)
2章 科学者長菅の見た「3.11」 証言者 スティーブン・チュー(米エネルギー長官)
3章 収束への道程 証言者 チャールズ・カストー
(米原子力規制委員会(NRC)日本派遣チーム責任者)
4章 同盟の試練 証言者 ジョン・ルース(駐日大使)
5章 戦後最大の国難 証言者 福山哲郎(官房副長官)
6章 最側近の葛藤 証言者 細野豪志(首相補佐官)
7章 国を守る者の覚悟 証言者 廣中雅之(統合幕僚幹部運用部長)
8章 「緩衝役」の目線 証言者 寺田学(首相補佐官)
9章 救世主と呼ばれた男 証言者 安井正也(経産省大臣官房審議官)
2022年5月2日 騙されたあなたにも責任がある ー脱原発の真実ー
出版社 株式会社 幻冬舎
発行日 2012年4月10日
価格 952円+税
著者 小出裕章
著者略歴:1949年東京生まれ。京都大学原子炉実験所助教。原子力の平和利用を志し、1968年に東北大学工学部原子核工学科に入学。原子力を学ぶことでその危険性に気づき、1970年、女川の反原発集会への参加を機に、伊方原発裁判、人形峠のウラン残土問題、JCO臨界事故などで、放射線被害を受ける住民の側に立って活動。原子力の専門家としての立場から、その危険性を訴え続けている。著書に『知りたくないけれど、知っておかねばならない原発の真実』『原発はいらない』などがある。
本の紹介:KAZU
【目次】
- なぜ東電と政府は平気でウソをつくのか
- さらなる放射能拡散の危機は続く
- 汚染列島で生きていく覚悟
私の提案:「自己責任を果たそう」
汚染を引き起こしてしまった責任に応じて、汚染を引き受けるしかない。原発事故で、日本中の大地が汚染された、汚染の度合いが違うだけで、すべての食べ物が多かれ少なかれ汚れている。
汚染された食べ物は、大人たちが責任に応じて食べるしかない。
「騙されたのだから、責任はない」ではなくて「騙された人には、騙された責任がある」
一番重いのは政府や東電。
国会の議員食堂や、東電の社員食堂は猛烈な汚染食品で献立をつくればいい。
がれきの問題も、汚染されたがれきは、東電の所有物、東電に返すべき、
米国原子力規制委員会公表の福島原発事故会議文書(3000ページ)のうち
3月16日の会議では
・最悪のシナリオでは、3つの原子炉がメルトダウンする。
・最終的に格納容器が壊れ、何らかの放射性物質の露出が起きそう
・現時点で、米国民の対比範囲は50マイル(80km)が妥当と考えるが、不確実であり、拡大する可能性がある と指摘
日本が提供したデータが基になっているので、日本でもアメリカと同じような判断を下すことはできたはず。
日本の原子力委員会でも最悪のシナリオを作成していた。「250キロ圏内は避難させるべき」と。
アメリカのいう80km圏内より相当広い範囲だ。
日本政府はなぜ公開しなかったのか。→パニックを防ぐことが一番の重要項目で、被曝を避けることは二の次にされた。
このとき、避難範囲を3kmと言い、10キロ圏内が屋内退避。その後、避難範囲が20キロ圏内となり、屋内退避は30キロ圏内に広がった。
地震が起きた翌日12日には、1号機の原子炉建屋が吹き飛び、メルトダウンしていた。日本政府がメルトダウンを認めたのは、2か月以上たった5月。
飯館村は40キロから50キロ圏内。猛烈な汚染を受けた。20キロ圏内の南相馬市の避難先が飯館村だった。日本政府の判断、指示の間違いによって、多くの人が被曝した。
日本政府の誤った判断で被害は必要以上に拡大。まだアメリカのほうがまともな国。
「原発は安全」と騙した側の責任は大きい。しかし、騙された側にも責任はある。
2022年4月6日 原発に反対しながら研究を続ける小出裕章さんのおはなし
出版社 クレヨンハウス
発行日 2012年4月
価格 1200円+税
著者 小出裕章
著者略歴 1949年東京生まれ。1972年、東北大学工学部原子核工学科卒業。1974年、東北大学大学院工学研究科修士課程修了(原子核工学)後、文部教官に採用され、京都大学原子炉実験所(現・京都大学複合原子力科学研究所)に入所。熊取六人衆の仲間達と出会い反原発を訴えるようになる。2015年3月定年退職。現在は長野県松本市で、太陽光発電や野菜の自家栽培による自給自足の生活を送る。全国で講演活動、反原発活動。著書多数。
本の紹介:kazu
この本は、「子どもから大人まで、原発と放射能を考える」副読本 であり、原子力の専門家が書いた非常にわかりやすい本。
本の一部を紹介します。
・原発の平和利用とは?
原発は原爆を作るために開発された技術を発電に使ったもの。
原爆が広島、長崎に投下され、多くの犠牲者がでたことで、大人たちは、放射線がとても危険なことを知っていた。
経済発展のために、沢山の電気が必要と思い込み、発電のため原爆の材料である原子力エネルギーを使うことに決めた。
それは国策として進められ、原発を作ることに反対する人を踏みつけて、作られた。
・原発はすぐなくせない?
原発がなくなると電気が足りなくなる。のうそ
原発を動かすためにとめている火力発電所をちゃんと動かすだけで、電気は間に合う。
原発を止めても電気は足りる。原発がなければ困るというのは真実ではない。
また再生不能エネルギーでも究極埋蔵量は、原子力発電の元になるウランよりはるかに、石炭、天然ガス、石油、新たに発見されたシェールオイルが多い。
さらには、世界では、太陽、風、地熱など再生可能な自然エネルギーの研究が進んでいる。
・1986年に起こったソ連のチェルノブイル原発事故は、福島第一原発事故と同じレベル7で、放射能汚染被害は広島原爆の800倍。汚染地域は14万平方キロメートル、日本の面積の4割ともなる。放射能は地球1周した、まさに地球規模の事故だった。
事故から10年後の1997年から16-18歳の甲状腺ガン急増。2000年には10万人の10人が発症。事故のときの子どもが成長してから発症した事実を表している。
・ 原発に反対するのは、あらゆる場面でその価値感に反しているから。
都会の大量消費エネルギーのために、過疎地に原発を建てる。
ウランの採掘地域は、先住民の居住地が多く、被爆の可能性も知らされず、低賃金で働かされている
原発の点検の危険なところの作業は社員でなく、下請け労働者で、被爆の危険も知らされずに働かされている。
・放射能はなぜ危険なのか?
目に見えず、においもなく、味もしない。音も聞こえず、触ることもできないのが放射能。
放射能は、私たちの体を作っている細胞の分子と分子のつながりを壊してしまう大きな力をもっている。
・放射能はどうしてこわいのか?
人のからだをつくっている分子は小さな力。比べて放射線は10万倍、100万倍もの力を持って小さな分子のつながりをこわしてしまう。
放射線を受けた細胞は間違った遺伝子を持つ細胞をつくり、白血病や、がんの原因になる。大量の放射線を浴びて出る症状を「急性障がい」と言われ、量によっては死ぬ。
放射線を受けて時間がたってから症状が出ることを「晩発生障がい」といわれ、何年もたってから、体がだるい、疲れやすく仕事ができない。などの症状が出、何年も、何十年もたってからガンや白血病になることもある。
またこの症状は放射線を浴びた本人だけでなく、子どもや、孫に伝わることがあり「遺伝的障がい」という。
放射線に被曝するということは、時間を越えて、世代を超えて、いのちを脅かすということ。
放射線の感受性は年齢によってちがう。30歳の大人に比べて子どもは、4倍も5倍も多く細胞が傷つきます。放射線から最も守らなければならないのが、こども。
・原発のウソとホント
地球温暖化は、化石燃料を燃やして二酸化炭素を排出して、地球を暖めるため、原発は二酸化炭素を出さないので地球に優しいと、宣伝。
原発は、ウランを核分裂させたときに出るエネルギーを熱に変えて電機を作り出す。たしかにそのときは、二酸化炭素を出さない。
しかし、燃料として使うため、天然ウランから核分裂しやすい「ウラン235」をあつめる「濃縮」作業が必要で、さらに燃料べレットを作る作業、べレットを4mの管につめて燃料棒として原子炉に入れるという作業の途中でたくさんの石油を使い、二酸化炭素を排出する。
また原発の熱をとるために海水を引いて冷やしているが、冷やした後の海水は7度高くなって海に戻される。海の生き物の住む環境の悪化の要因となっている。
さらに海水の温度を高くすることによって、海水の中の二酸化炭素を空気中に出している。原発が二酸化炭素を出さないというのは間違い。 地球温暖化の一因でもある。
原発は死の灰を生み出し、子どもたちの未来、さらに遠い未来まで傷つけ続ける。
1.原発は安全のウソ 日本の技術は高い。地震があっても絶対安全〔安全神話」
→地震大国の日本に原発は建ててはいけない。福島第一原発の事故で「安全神話」は崩れた。
2011年12月政府は福島原発事故の収束宣言
→いまも終わっていない。放射能汚染は福島→日本→世界に広がっている。
2.原発は発電費用が安いのウソ
発電コストは火力、水力、太陽光発電より安い
→ 安く見せているだけ。原発を作るため地方にばら撒く電源三法交付金や廃炉の費用が入っておらず、かつ原発から出るゴミの再処理費用を電気料金に上乗せしている
日本の原発は事故を起こさないから、そのための費用を考えなくてもいい
→ 事故が起きたとき、電力会社だけでなく税金から費用を払う(原子力損害賠償法)法がある。
3、電気が足りないのウソ
原発は日本の電気の30%を発電している
→ わざわざ火力発電をとめてその分原発を動かして、原発の利用率を高くしている。
原発を止めれば、電気が足りなくなる。2011年4月から節電キャンペーン
→これまで最大需用電力が、現在ある火力発電+水力発電を超えたことはない。福島原発事故以来日本の原発は止まっているが、電気は足りている。
東京電力が2011年4月以降に行った、時間停電は節電キャンペーンで、本当の理由は電気が足りないと宣伝し、原発のお必要性を言いたかったから。→国民を欺く手法。
あとは、本を手にとって、お読みください。
2022年3月31日 子どもたちを放射能から守るために
出版社 亜紀書房
発行日 2011年6月
価格 952+税
著者 菅谷(すげのや)昭
著者略歴
1943年長野県生まれ。信州大学医学部卒業。聖路加国際病院での研修を経て信州大学医学部第二外科学教室に入局。1976年トロント大学に留学して甲状腺疾患の基礎研究を学ぶ。1991年から松本市のNGOによるチェルノブイリ原子力発電所事故の医療支援活動に参加する。1993年信州大学医学部助教授に就任。
1996年からベラルーシ共和国の首都ミンスクの国立甲状腺がんセンターにて小児甲状腺癌の外科治療を中心に医療支援活動に従事。1999年チェルノブイリ原発事故により高度に汚染されたゴメリ州の州立がんセンターで医療支援活動にあたる。
2004年松本市長選挙に立候補。初当選。4期つとめて2019年退任。2020年から松本大学学長。
2003年5月「NHK・プロジェクトX」でも紹介されました。(プロジェクトX (2003年5月13日放送))
https://www.nicovideo.jp/watch/sm14109404
本の紹介:kazu
この本は、チェルノブイリ原発事故で小児甲状腺ガンで苦しむ子どもたちを救おうと、原発被害が最も大きかったベラルーシで、単身医療支援活動を行った著者が、2011年に発生した、福島第一原発事故で被害にあった子どもたちを救うために書いた本です。
人類史上最悪といわれる「レベル7」の核被害が起こったチェルノブイリと同じ、「レベル7」の福島原発事故。大切な子どもたちを放射能から守るために、何をしたらいいのか。親たちの心配は限りがありません。
水道のお水は飲ませてもいいのですか?
野菜や魚は安全ですか?
放射能を浴びたら、どんな健康被害が出るのですか?
82ページの本の中で、親たちの心配を一つ一つとぎほぐすように丁寧に説明しています。
構成
1章 放射能を浴びたら、どんな健康被害がでるのですか?
2章 水や野菜や魚、普通に摂ってもだいじょうぶですか?
3章 25年目のチェルノブイリ
2022年3月22日 チェルノブイリ いのちの記録
出版社 晶文社
発行日 2001年10月
価格 1900+税
著者 菅谷(すげのや)昭
著者略歴 1943年長野県生まれ。信州大学医学部卒業。聖路加国際病院での研修を経て信州大学医学部第二外科学教室に入局。1976年トロント大学に留学して甲状腺疾患の基礎研究を学ぶ。1991年から松本市のNGOによるチェルノブイリ原子力発電所事故の医療支援活動に参加する。1993年信州大学医学部助教授に就任。
1996年からベラルーシ共和国の首都ミンスクの国立甲状腺がんセンターにて小児甲状腺癌の外科治療を中心に医療支援活動に従事。1999年チェルノブイリ原発事故により高度に汚染されたゴメリ州の州立がんセンターで医療支援活動にあたる。
2004年松本市長選挙に立候補。松本市民芸術館建設反対運動の機運に乗り、4期目を目指す現職の有賀正を破り初当選を果たした。4期つとめて2019年退任。
2003年5月「NHK・プロジェクトX」でも紹介されました。(プロジェクトX (2003年5月13日放送))
https://www.nicovideo.jp/watch/sm14109404
本の紹介:kazu
1986年のチェルノブイリ原発事故は地球規模で環境汚染を招き、世界中を霊感させた。原発事故から10年、当時のこども達の小児甲状腺がんの増大を知る。
「一度しかない人生を、自分はいかに生きたのか」を自問自答したとき、「ひょっとすると、甲状腺専門医の立場で、少しは役に立つのでは・・・・」と、1996年から2001年の5年半をチェルノブイリ原発事故の被害が最も大きい、べラルーシに長期滞在し、チェルノブイリの医療支援活動に従事した。
この活動を行うにあたってのモットーは「あせらず、気負わず、地道に、そして自分のできる範囲で」。
この本は、5年半の活動中に付けつづけた日記をまとめたものです。
ベラルーシでは、ロシア語はしゃべれず、英語はほとんど通じない中でべラルーシから給与はなく、まったくの手弁当での活動でした。
1996年1月~1999年6月 首都ミンスク
ミンスクでの活動の拠点は国立甲状腺ガンセンターで、老朽化した医療設備、不足している医療備品
に驚いた。手術に必要な備品を患者が用意しなければならない。
なによりも、甲状腺がん手術手法が、耳の下から首にかけて、L字形の大きな切開で、術後大きな傷跡が残る手法に、怒りにも似た衝撃を受けた。
ベラルーシ入りして1か月、初めての甲状腺切除手術を行う。日本式の手術に医者たちの驚き、だんだんと知られるようになり、「日本人の医者に手術してほしい」と要望が増えてきた。
日本からの訪問団も増え、ベラルーシの医療環境を支援する財団が日本で設立されるようになった。
ベラルーシの医療従事者の待遇は悪く、生活できないため、やむなく転職する医者が。
現地の医師の医療技術を高めるため、学習会を定期的に行い、徐々に技術が向上し、患者が安心して手術を受けられるようになった。
1999年6月~2000年12月 ゴメリ州ゴメリ市
ミンスクで、若い医者の技術向上をみて、最も原発被害の多い、ゴメリ州に拠点を移した。
ゴメリ市での拠点はゴメリ州立腫瘍病院。ここでも若い医師と学習会を開き、ミンスクまで行かなくても、甲状腺がん手術をゴメリでできるようになった。
特に重視したのは術後の患者の家庭訪問検診で、家族から感謝された。
うれしかったのは、1997年に甲状腺ガンの手術をした女性が結婚し、2000年に女児を出産したこと。
2000年12月~2001年6月 ゴメリ州モーズリ市
ゴメリ州モーズリ市はチェルノブイリ原発から90kmと最も近い市で、ゾーラチカ子どもセンター内に開設した「チェルノブイリ医療基金」ベラルーシ事務所に移転。ベラルーシ滞在最後の半年をここで支援活動を行った。ここでの支援は甲状腺検診が中心。毎回300名~1000名の人が受診。この中で要精密検査者は50名を超すことたびたび。早期発見治療のために検査の重要性を強く認識。
ベラルーシでは医療支援だけでなく、少年少女音楽舞踏団「バレースカヤ・ゾーラチカ」の日本公演を支援したり、ベラルーシの中高生と日本の中高生との文通の架け橋となった。
2022年3月12日 いないことにされる私たち
出版社 朝日新聞出版
発行日 2021年4月
価格 1500円+税
著者 青木美希
著者略歴 札幌市出身。北海タイムス(休刊)、北海道新聞を経て全国紙に勤務。東日本大震災の発生当初から被災地で現場取材を続けている。「警察裏金問題」、原発事故を検証する企画「プロメテウスの罠」、「手抜き除染」報道でそれぞれ取材班で新聞協会賞を受賞した。著書「地図から消される街」(講談社現代新書)で貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞など受賞。2021年4月に「いないことにされる私たち」(朝日新聞出版)を出版。
本の紹介:kazu
つねに原発被災者と向き合い、寄り添って、直接取材をし、文字にして、支援をするという著者の生き方を、正面から感じ取れる一冊です。
はじめに、では原発事故以来の国の国民の命を軽視するいくつもの実例が記されている。
被災者の重度精神障害の割合は全国平均の2倍以上という中、2019年政府は、医療費を無料にする措置は打ち切る方針を決めた。
放射性物質で汚染された土を、処理しきれないと、全国の農地や道路で使う方針。
処理済み汚染水の海洋放出を決定。
こういうことを提言している人物を調べると、原発を数十年前から推進し、再び原発は必要だと復権させようとしている者たち。
第1章 消される避難者
いつの間にか消えた9割の避難者
福島県郡山市から大阪市に避難している森松明希子さんは、区ごとの避難者数一覧をみて驚いた、自分の家族が記されていない。
ここから森松さんの「記載させる」活動が始まる。
取材で実名で応じ、国会、内閣府、大阪府、どこにも出かけて、マイクを持って訴える。東電を相手取って「避難の権利」を求め、大阪地方裁判所に訴えた「原発倍賞簡裁訴訟」の代表も務めている。
復興庁との交渉でマイク握って訴え、最後に川柳を「復興庁 避難者消したら 復興か」
そしてようやく、避難者一覧に記載された。
第2章 少年は死を選んだ
子どもが誕生してから一手に家事と子育てを引き受けて、病院で働く妻を支えてきた、庄司範英さん。子どもは範英さんになついていた。
原発事故で、南相馬市から新潟に一家で避難してきた。
2017年3月、住宅支援が打ち切られたため、悩みぬいた結果、単身で南相馬で、除染作業の仕事を行うため、家族と別れて、南相馬へ帰ってまもなく2017年6月に長男が自殺した。
それからの範英さんは、食べ物を口に入れても吐いてしまうほどに。長男を失った苦しみにさいなまれ、「死にたい」と何度も自殺未遂を繰り返す。
青木さんは、何度も南相馬まで足を運び、話を聞き、話をするという繰り返し。
青木さんが庄司さんのことを書いた記事が朝日新聞で連載に。記事を読んだ人の応援メッセージに、庄司さんもちょっぴり元気に。
後は、あなたが本を手に取って、感じてください。
2022年3月8日 NO NUKES 〈ポスト3.11〉 映画の力・アートの力
出版社 名古屋大学出版会
発行日 2021年2月
価格 4500円+税
著者 ミツヨ・ワダ・マルシアーノ
著者略歴 徳島県出身。早稲田大学文学部卒業
ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズで修士号(M.A)を取得。
アイオワ大学大学院シネマ・比較文学で博士号(Ph.D.)を取得。
カールトン大学(カナダ)芸術文化学部教授を経て
現在 京都大学大学院文学研究科教授
本の紹介:kazu
本書は、映画とアートから「原子力発電」のありかたを問うものです。
原発ゼロへカウントダウンinかわさきでも講師として来ていただいている、元京都大学助教授の小出裕章さんや映画監督で弁護士の河合弘之さんも登場します。
第1章 「フクシマ以前のNO NUKESー戦後原子力映画と『安全神話』史」
では1950年代から1980年代までの映画作品から福島第一原発事故以前の「原子力映画」を俯瞰している。
第2章 「3.11をまたぐー『ミツバチの羽音と飛球の回転』が示す政治力」
では、反原発運動の旗手といわれる映像作家・鎌仲ひとみの作品から、彼女の作品の新しさを考察する。
第3章 「『原子力ムラ』に抗する」
は、弁護士でありながら映画を製作し続ける河合弘之の声を聞く。映画つくりの素人の河合さんは、法廷を超えた、もっと多くの人々に伝えるために映画というメディアを選んだ。
河合弘之監督 反原発三部作
「日本と原発 私たちは原発で幸せですか?」(2014年)
「日本と原発 4年後」(2015年)
「日本と再生 光と風のギガワット作戦」 (2017年)
「東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故」(東電刑事裁判)2019年7月10日YouTube公開
https://www.youtube.com/watch?v=ZJhyDSnutqk
「東電刑事裁判 不当判決」(不当判決)2019年11月3日YouTube公開
https://www.youtube.com/watch?v=VY-iMQsxkNU
第4章 「インタビューの力」
では、「東北記録映画三部作」に注目。「なみのおと」(2011年)、「なみのこえ」(2013年)、「うたうひと」(2013年)の特徴は、映像作家自らが、インタビューに参加し、被害者となった人々との新たなコミュニケーションに取り組んでいる姿。
第5章 「動物、女性、こども、外国人から学ぶフクシマ」
では、福島に残された家畜やペット、帰還困難区域を徘徊する野生動物たち、羽根に「白斑」を持つ被爆つばめなど、不可視化された人間の「死」は動物の「死によって置き換えられてきた。
監督・岩崎雅典は、動物たちの姿を長年撮影しつづけ、被曝が生態系に及ぼす影響を、動物を通して可視化しようと試みるドキュメンタリー・シリーズ『福島 生きものの記録1~5』(2013年~017年)は観客に、静かに、力強く被曝の危機を訴えかける。
2022年2月25日 私が原発を止めた理由
出版社 旬報社
発行日 2021年3月
価格 1300円+税
著者 樋口 英明
著者略歴 三重県出身、司法修習第35期、2006年大阪高裁判事、2009年名古屋地家裁支部長、2012年福井地裁総括判事2017年名古屋家裁総括判事で退官。2014年関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め判決、2015年関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差し止めの仮処分決定を出した。
本の紹介:kazu
コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている (福井地裁大飯原発運転差止め訴訟判決要旨より) 大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文はこちらから
最近、住民が求めている、原発再稼働反対訴訟が原告敗訴の状況が続いている。
これはなぜか。 被告の国や電力会社は原発の技術論を吹っかけ、これに原発技術の素人である原告は太刀打ちできず、裁判判事も振り回されて、結果、被告勝訴の判決を出している。忖度しての判決は、数少ないという。
この本の著者は、2014年大飯原発の運転差し止め判決を出したことで、有名だ。
訴訟する住民は、原発技術論で対抗するのでなく、原発素人の裁判官に原発は「なにが一番問題なのか、国民の命は、生活はどうなるのか」で対抗すべき。と説く。
この本は原発素人の元裁判官が書いた本で、誰でもわかる本です。
原発運転が許されない理由 5つ
第1.原発事故のもたらす被害は極めて甚大。
第2.それゆえに原発には高度の安全性が求められる。
第3.地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということにほかならない。
第4.我が国の原発の耐震性は極めて低い。
第5.よって、原発の運転は許されない。