不老不死はあり得ない
岸田政権が、原発推進政策を打ち出した、直後の原発訴訟で注目された裁判は、住民の訴えを退け、民主主義の根幹である三権分立の原則をすてて、司法が内閣に追随する形となった。
40年を超える老朽原発 関電美浜原発3号機は、8月12日運転再開の予定だったが、7トンの水漏れ事故があり、大幅遅れの9月26日に再開した。
この裁判は、運転期間が40年を超えて、国内で唯一稼働している関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)は老朽化が進み安全性に問題があるとして、住民が関電に運転の停止を求めた仮処分で、大阪地裁(井上直哉裁判長)は、12月20日、住民の申し立てを却下し、差し止めを認めない決定をした。
岸田政権の原発の再稼働推進、運転期間の「原則40年、最長60年」とする現行ルールを見直し60年超の運転を可能とする仕組みは、いま全国で物議を醸しだしている。
原告住民は、炉内で発生する中性子の照射によって原子炉圧力容器がもろくなるなど設備の劣化が進み、「事故の恐れが飛躍的に高まる」と訴えた。
被告の関電は、劣化状況を適切に把握し、改修を施したうえで、新規制基準に「適合」しており、「高経年化に問題はない」と主張。
大阪地裁(井上直哉裁判長)は関電による経年劣化対策に非合理点はなく、耐震性にも問題はない」と関電側の主張を全面的に受け入れた。
原発推進に大きく舵を切った、政府の方針に「お墨付き」を与えた大阪地裁(井上直哉裁判長)の判断は疑問だらけで、忖度したと思われても仕方ないものだ。
そもそも原発の「健康管理」には限界がある。2012年に40年ルールが制定された際、当時の細野大臣は「なぜ 40 年なのかということでありますが、一つは、いわゆる圧力容器の中性子の照射による脆化であります。」と答えている。かつこの圧力容器の交換は不可能なもの。関電は交換不可能なものをどのようにして「改修」したのか、はなはだ疑問で、井上裁判長は、何を根拠に「経年劣化対策に不合理点はない」と言いきったのか。
生き物にも機械にも「不老不死」はあり得ない。
これで、事故が起きたら、大阪地裁の井上直哉裁判長は、どういう態度をとるのだろう。すでに福島第一原発で大事故が起きている。「勉強不足」では決して逃れられない。
それに美浜原発3号機では2004年、長年点検リストから漏れていた配管が劣化して破れ、噴き出した熱水と蒸気を浴びた協力会社の作業員5名が死亡、6名が重傷を負う大惨事を引き起こした実績があることを忘れてはならない。
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・NHK NEWS WEB 12月20日 40年超の関電美浜原発3号機 運転停止認めず 大阪地裁
・朝日新聞 12月20日 老朽原発の美浜3号機、差し止め却下 大阪地裁「安全性に問題なし」
・毎日新聞 12月20日 美浜原発3号機、運転差し止め認めず 稼働中「40年超」 大阪地裁
・美浜原発3号機の運転差し止め訴訟 大阪地裁が住民側の仮処分申し立てを却下(動画)