2023.1.26 「脱原発」成長論

  ―――新しい産業革命へ

出版社 筑摩書房
発行日   2011年08月25日
価格 1400円(+税)
頁数 192ページ
著者      金子 勝

著者略歴:金子 勝(かねこ・まさる)
1952年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授などを経て、現在、慶応義塾大学経済学部教授。専門は財政学、制度の経済学。著書に『市場と制度の政治経済学』(東京大学出版会)、『反経済学』(新書館)、『セーフティーネットの政治経済学』『戦後のおわり』『閉塞経済』(筑摩書房)、『新・反グローバリズム』『市場』(岩波書店)、『逆システム学』(共著・同)、『粉飾国家』(講談社)、『新興衰退国ニッポン』(共著・同)、『環境エネルギー革命』(共著,アスペクト)ほか多数。

本の紹介:KAZU

本書は東日本大震災からわずか5か月後に出版された。

経済学者の視点で、過去の失敗を繰り返していては日本は再生できないとして、1990年代のバブル崩壊を例にとり、金融市場の中核たる大手銀行の経営者と大蔵省の官僚は責任逃れに終始し、危機管理能力の欠如を露呈し、実態を隠蔽し続け、収拾がつかなくなったら「大きすぎてつぶせない」と開き直る始末。

 3.11ではどうか、バブル崩壊時と酷似した状況が起きており、東京電力や既得権益を保護する経済産業省などの「原子力ムラ」が、地震直後からメルトダウンが始まっており、水素爆発が起きているにも関わらず、情報隠しを繰り返し、被害を拡大させた。

3・11以後は、バブル以後の失われた20年を繰り返してはならない。
「失われた20年」をもたらした無責任体制という「連続」を断ち切ることが不可欠である。
と述べている。

【目次】

はじめに――「連続」と「断絶」から危機の脱出口を考える

  • 3・11以後へ
    1 失敗の根本的反省なくして再生はありえない
    2 環境エネルギー革命へ
  • 世界金融危機とエネルギー転換
    1 巨大なバブル崩壊
    2 マクロ経済政策の限界
    3 供給サイド政策の失敗
  • 環境エネルギー革命が起きている
    1 エネルギー転換が始まっている
    2 エネルギー転換のための政策
    3 電力改革に立ちはだかる壁
    4 新しい産業政策と政府の役割
  • 大震災からの地域再生
    1 東日本大震災と農林水産業の再生
    2 日本の農林水産業はどこを目指すべきか
    3 地域分散ネットワーク経済を
    4 財源はどうすべきなのか

おわりに ――公共的な資本主義へ

「おわりに」で、

この社会はどのように変わっていかなければならないのか。

「失われた20年」をもたらした政官財学会のリーダーたちによる無責任体制という「連続」を断ち切るとともに、世界金融危機・エネルギー危機・地球温暖化の危機という三つの危機を同時に切り抜けていくためには、環境エネルギー革命が不可欠である。

こうした変革を通じて日本は、中央集権メインフレーム型経済から、地域分散ネットワーク型経済へと転換する。それは、環境にやさしい21世紀型経済システムであり「地域主権」に実体的な基盤を与える。

一言でいうなら、金融資本主義から公共的な資本主義への転換である。

そして3・11では、この国の人々に変化をもたらした。被災した人々の不幸をできる限り軽減したい、そのために役立ちたいという感情を呼び起こした。それは被災された方たちの困難を、自分たちの困難として受け止めようという感情である。

他者を出し抜くことでなく、他者と協力しあうことで何かを成し遂げることができたなら、どれだけ楽しい生活になるだろうか。そう思う人は着実に増えていると筆者は考える。

3・11がもたらしたもの、それは、この国の人々が、本来の人間を取り戻すきっかけになり、困難を切り開く新たな経済の仕組みを作り上げる、という希望への道を歩むことができる。と感じ取れる、一冊でした。

それから12年が立ちました。筆者が本書で示したようにこの国は変わったでしょうか。

その答えは、2023年3月12日に開催される、原発ゼロへのカウントダウンinかわさき集会で、金子勝さんの講演を聴いて、あなたが判断してください。

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