石渡委員一人反対
原子力規制委員会は2月8日の定例会合で、石渡委員の「安全側への改定と言えない」の反対意見を受けて、「多数決で決定しない」と先送りしたが、5日後の2月13日臨時会を開いて、賛成4名、反対1名の「多数決で決定」してしまった。
なぜ、わざわざ臨時会議を開いて、国民にとって大事なことを「決定」しなければならなかったのだろうか、疑問が残る。
疑問は、臨時会のやり取り内容の委員の発言から垣間見ることができる
杉山委員:われわれは外から定められた締め切りを守らなければいけないと、せかされて議論したきた。
山中委員長:法案のデッドライン(締め切り)があるので仕方がない
原子力規制委員会は、福島原発事故を受けて、それまで原発を推進する経済産業省が「規制」も担当していたが、事故のあと、規制と推進の分離を図って、「独立機関」として設立された。
その規制委員会が、岸田政権の推進政策の柱「60年超の運転」を可能にする法案を通すために、「多数決で決定しない」と決めたことを破ってまで「多数決決定」したことは、もはや「規制」の役割を放棄したものではないだろうか。
現状、電力会社から原発の再稼働申請が出され、審査中の案件があるが、どれも不備があり、審査が難航しているという。
岸田内閣が掲げるGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針は、運転開始から30年を超えた原発については、最大10年ごとに安全性の審査をしたうえで運転延長を最大60年まで認めることになっているが、審査中の期間は除外するため、60年を超える運転を可能にし、審査が長引けば長引くほど老朽原発が長く生き残ることになる。
昨今では老朽原発の事故は各地で起こっている。昨年再稼働した美浜原発3号機では2004年作業員5名が死亡、6名が重傷を負う大惨事を引き起こしている。
このことを考えれば、老朽原発の運転延長など考えるべきことではないはずである。
原発事故は必ず起こる。日本国民はすでに知っている。
「60年超運転」に賛成した委員は、事故が起こった時の「責任」を取ることを前提に「賛成」したはずである。事故の後、「勉強不足だった」の言い訳はもはや通用しない。
・筆者コメント:定例会で「多数決で決定しない」と明言していた山中委員長。なぜ、それからわずか5日後に急遽臨時会を開いて、「多数決で決定」しなければならなかったのだろうか。これは全くの憶測だが、定例会のあと、原子力ムラか、官邸から、「何をしている。さっさとやらんか」と激をとばされて、慌てふためいて「多数決決定」で押しきったのではないだろうか。これが真実なら、まことに情けないことだ。
【賛成した委員】
委員長 山中 伸介(やまなか しんすけ)
委員 田中 知(たなか さとる)
委員 杉山 智之(すぎやま ともゆき)
委員 伴 信彦(ばん のぶひこ)
【反対した委員】
委員 石渡 明(いしわたり あきら)
メディア掲載状況
・東京新聞 2月14日 原発運転60年超を石渡委員反対のまま多数決で決定 原子力規制委 独立性はどこへ…
・朝日新聞 2月14日 賛成の委員からも「違和感」 規制委が異例の多数決で原発新ルール
・毎日新聞 2月16日 原子力規制委の多数決 議論不足では信頼されぬ
・NHK 2月14日 原発老朽化対策の新制度 1人が反対 多数決で決定 原子力規制委