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げんぱつ長屋談義  〈第11話〉

原発をとめた町、とめた人びと

2026.5.17

大家さん
八っつあん
おうめさん

八  てえへんだ!てえへんだ! 大家さん

大家 なんだい八っつあん、あわてて

八  へい。この間再稼働して、5月14日に発電を再開したばかりの、女川原発の2号機がタービンの弁に不具合が見つかったようで、原子炉を停止したようですよ。

うめ  そういえば、5月12日にも美浜原発3号機でもタービンのカバーに穴が開いて蒸気漏れをおこしたそうですよ。

八  まったくこう立て続けて事故がおこっちゃ、原発の近隣のみなさんは、いつ大事故になるか不安だろうなあ。 でもなんで、こんな危険な原発が日本にたくさんできちまったのかなあ。 原発を作るのに反対した人はいなかったのかなあ。

大家 それが反対した人、反対した町がたくさんあるんだよ。

八  ええ!そうなんですかい

大家 日本が高度経済成長に入って、成長を進めるために、たくさんの電気が必要だと国が国策として原発建設を促進したんだよ。電力会社は我先にと、建設立地を物色したんだよ。 原発は核兵器と同じ放射能を出す危険なものだから、立地先は事故が起きても影響が少ない過疎地が選ばれたんだね。それも熱した原子炉を冷やすための水が手軽に使えるところ。ということで、主に海沿いのところが選ばれた。

うめ  海沿いの町と言えば、漁業で生計を立てているところが多いんじゃないですか。原発ができれば、安全な魚をとることができなくなりますよね

大家 そうだね。それで、立地先とされた各地で、原発建設反対の声が上がったんだよ。
   結果、原発ができたのは59基。原発を作らせなかったのは50か所以上にもなる。
八  ええ! そんなにたくさんのところが作らせなかったんですかい。

大家 全部できていたら、100基以上の原発で、足の踏み場もないほどの原発列島になっていたんだよ
   原発ができたところでも、もちろん反対運動はあったようだ。しかし、人が減って過疎になり、経済基盤が弱かったりするところは、生活や地域の存続のために、原発を受け入れたのだろうね。決して望んで受け入れたところはないと思うね。
むしろ電力会社は、そういうところを狙って、建設立地にしていったと言えるね。

うめ テレビなどで報道された石川県珠洲原発、三重県芦浜原発、山口県上関原発、新潟県巻原発などは、町が原発推進派と反対派に分断されて、長期間にわたって苦しまなければならなかったようですね。きっと他のところでも同じような苦しみを味わったのでしょう。

大家  金をばらまいて推進派を増やす。反対派の人が暴力を振るわれる。謀略ビラがまかれたり、芦浜原発では、テレビ、週刊誌を使って大掛かりな謀略報道が行われたそうだよ。

八  テレビ、週刊誌を使っての謀略は、1地方ではできないですよね。中央でコントロールする組織が動いているってえことですね。

大家 原発立地の人たちは、そんな大きな組織をバックにしている電力会社と果敢に闘ったんだよ。

八  どういうふうに闘って、原発から故郷を守ったんですかね。

大家 いろんな闘いがあるが「住民投票条例を制定して、投票で反対が賛成を上回った」とか、選挙で、反対議員が過半数を超えた、反対町長を誕生させた。など。
珠洲原発では、県議会で珠洲から反対議員を当選させて、原発推進知事をけん制した。などがある。
芦浜原発では、「三重県に原発いらない県民署名」を展開して81万もの署名を集めた。これが知事に原発建設「白紙撤回」を決意させたと言われているんだ。

八 すごい闘いをしてきたんですね。なあーんにも知らなかった。穴があったらはいりたい。日本人はお上の言うことに逆らえないと思っていたけど。そうじゃないとわかって、元気が出てきましたよ

うめ 2024年1月に能登半島地震があった時、「珠洲原発を阻止してくれて、ありがとう。原発の大事故を防いでくれてありがとう」と感謝の電話がいくつも寄せられましたよね


大家 そうだ。原発を作らせないことは、建設立地に住む人だけの問題ではなく、原発事故で被害にあう、広い範囲に住む人の問題でもあるんだね。
福島原発事故で実証されたじゃないか。だから、原発をとめた人たちは、すごいことをやったんだよ。

うめ  原発はそもそも「差別」の産物だそうですね。

大家  そうだよ。事故が起こっても影響の少ない過疎地で電気を作って、人口の多い大都市に送る。 原発立地の人が危険を背負って、大都市の人間が電気の便利さを享受する。原発は人の命を差別することで動くんだよ。

うめ  珠洲原発に反対した女性がこんなことを言っています。
「電気はみんな向こうのほうへ送ってしまうんげやろ。そんないい電気なら、こんなとこ建てんでも東京湾でもどこでも建てるとこたくさんあるやろ。宮城のあそこいって建てればいいやねん、※大内山にでも。 こんなとこに建てるとこ見ると、たとえ事故が起きて死んでも少ないとみとるんやね。田舎のもんを人間と見とらんがやね。本当に情けないです」。

大家  本当にそうだ。反原発運動は命を守る闘いだね。原発を建てさせない努力を、原発立地での人たちに引き受けさせたままではいけないね。大都市に住んでいるものは、「危険な原発を受け入れるか受け入れないか」との選択を突き付けられながら、反対運動を続ける人たちへの連帯を求められているね。

うめ はい。そうですね。
八  がってん 承知の助!

※大内山は皇居のこと。日本における身分差別の根源である天皇制にふれている。
それは主に都市部で「消費されるエネルギーの生産リスクを非消費地である過疎地に背負わせる仕組みに集約されている。 つまり人身御供のシステムなのだ。

※書籍「原発をとめた人びと」 「原発を止めた町」から引用
※グリーンピース 原発建設を止めた日本の市民運動 から引用

by kazu